資源エネルギー庁は2026年7月14日、第4回「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 電力安定供給ワーキンググループ」を開き、需給調整市場の応札・約定状況と上限価格の見直しを議論しました。
事務局は、一次調整力、二次調整力①、両商品を同時に提供する複合商品の上限価格を、現行の15円/ΔkW・30分から10円/ΔkW・30分へ引き下げる案を提示し決定しました。
電力需給調整力取引所は7月30日に変更を周知しており、2026年9月1日実需給分からの適用を予定しています。
出典:第4回電力安定供給ワーキンググループ
14円超は量の約3%、調達費の約17%
事務局は、2026年度の取引実績を基に、上限価格近傍の札が市場調達コストを押し上げている状況を説明しました。
一次調整力、二次調整力①、複合商品では、14円/ΔkW・30分を超える約定量は全体の約3%にとどまる一方、調達費用では約17%を占めます。
高値約定が数量面では限定的でも、一般送配電事業者の調達費、ひいては需要家負担に与える影響は小さくないとの整理です。
また、前日取引化後も一部エリア・時間帯で募集量に対する応札不足が残り、価格が上限付近に集中する場面が確認されました。
電源種別では、火力・揚水など既存の大規模電源と、蓄電池・VPPなど新規リソースで、起動費、機会費用、運用制約が異なります。事務局は、単純な価格比較だけでなく、応札量、約定率、電源構成、時間帯別の偏りを継続的に監視する必要があるとしました。
一律10円への引き下げ、委員から効果と副作用の両面
委員の発言では、秋元委員が高値札のコスト押上げ効果を踏まえ、上限引き下げの合理性を認めつつ、競争が十分に働いているかを検証する必要性を指摘しました。
小宮山委員は、価格だけを抑えることで応札が細り、必要な調整力を確保できなくなる可能性に留意を求めました。
土井委員は、蓄電池やアグリゲーターなど新規参入者の収益性と投資回収への影響を問題提起しました。
又吉委員からは、商品別・電源別にコスト構造が違うため、一律の上限設定が適切かを丁寧に検証すべきだとの趣旨の発言がありました。
松村委員は、競争が限定的な局面での高値約定を抑える必要性を重視しつつ、上限価格は恒久的な価格目標ではなく、市場構造の改善と併せて扱うべきだとしました。
議論では、10円への引き下げ後、さらに7.21円/ΔkW・30分など、より低い水準を視野に入れるかも論点となりました。
ただし、この水準への追加引き下げは決定されていなません。まず10円への変更後の応札量、未達率、調達費、電源構成を検証し、安定供給と市場調達コストの双方を見ながら次の対応を判断する方向です。
市場調達コスト低減と投資インセンティブの均衡
上限価格が15円から10円へ下がれば、上限近傍で約定していた札の単価が抑えられ、市場全体の調達費は低下する可能性が高まります。
一方、調整力提供者にとっては収入上限が下がります。とりわけ蓄電池やVPPでは、設備投資回収や他市場との収益の組み合わせに影響し、応札行動が変わる可能性があります。
制度化後は、コスト削減額だけでなく、必要量を確実に集められるか、特定事業者への約定集中が緩和されるかを併せて確認する必要があります。
長期脱炭素電源オークション、容量市場も議論
会合ではこのほか、長期脱炭素電源オークションについて、次回募集量を500万kWとする方向や、洋上風力の事業期間を20年として扱う案が示された。LNG火力の他市場収益を還付・控除する仕組みは継続検討となりました。
容量市場では、2030年度実需給分の調達量を1億9,690.5万kW、Net CONEを2万911円/kW、上限価格を3万136.5円/kWとする案を確認しました。
供給力不足が見込まれる場合に休止電源などを早期に確保する「供給力確保措置」の運用も議題となりました。需給調整市場の価格抑制策は、容量市場や長期脱炭素電源オークションが支える設備維持・投資回収との整合が重要になります。
今回の10円への引き下げは、少量の高値約定が調達費全体を押し上げる構造への即効的な対応です。
今後は、9月1日以降の取引データを基に、コスト低減効果、応札不足、競争性、新規リソースの事業性を一体で検証することが焦点となります。