国際エネルギー機関(IEA)は2025年9月12日、年次報告書「世界の水素レビュー2025」を公表しました。2024年の世界の水素需要は前年比2%増の約1億tに達しましたが、供給の大半は依然として化石燃料由来で、低排出水素の生産量は全体の1%未満にとどまっています。低排出水素をめぐっては、コスト高や需要・規制の不確実性、インフラ整備の遅れを背景に案件の中止や遅延が相次ぎ、2030年までに実現しうる生産量の見通しは、発表済み案件ベースで年間3,700万tへと、前年版の同4,900万tから下方修正されました。
一方でIEAは、稼働中または最終投資決定(FID)済みの案件だけでも2030年までに2024年比5倍となる年間420万tに達すると分析し、さらに実効性のある政策が導入されれば追加で600万t規模の案件が実現しうるとしています。電解装置分野では中国が優位に立ち、世界の設置容量・FID済み容量の65%、製造能力の約60%を占めました。
需要創出策としては、欧州が再生可能エネルギー指令(RED)に基づく運輸・産業向け数量割当や航空分野への義務付けを主導するほか、インドは精製・肥料分野、日本・韓国は発電分野を中心に取り組みを進めています。国際海事機関(IMO)のネットゼロ枠組みも水素由来燃料の需要を押し上げる可能性があるとしています。海運分野では、2025年6月時点でメタノール燃料船が60隻超就航し、約300隻が発注済みで、シンガポールなど主要17港が世界の燃料補給需要の6割超を担っていることから、港湾インフラの整備が今後の普及の鍵になるとしています。また今回の報告書では新たに東南アジアの水素市場動向を特集し、同地域の低排出水素生産量は2030年までに発表済み案件ベースで48万tに達する可能性があるとしています。
出典:https://www.iea.org/reports/global-hydrogen-review-2025/executive-summary