【分析】容量市場、E-Flow、東電RP、JERAの応札時に問題事案。供給力不足下で問われる「公正」の定義

容量市場とは――電力量ではなく将来の「供給力」を確保する市場

容量市場は、実際に発電した電力量「kWh」ではなく、将来必要な時に電力を供給できる能力「kW」を取引する仕組みです。日本では原則4年前のメインオークションで供給力を確保し、その後の需要見通しや電源の変化を踏まえ、実需給1年前に追加オークションを行います。

2027年度を対象とする2026年度追加オークションでは458万kWが約定し、全エリアの約定価格は1万361円/kW、経過措置控除後の約定総額は約425億円となりました。

容量市場では、大規模な発電事業者が合理的な理由なく電源を応札しない「売り惜しみ」と、電源維持に必要な金額を超えて高値で応札する「価格つり上げ」が監視対象となります。

単一価格で約定する市場では、一部の応札行動が限界価格を動かし、小売電気事業者が負担する容量拠出金に波及する可能性があるためです。

追加オークションでは供給余力が小さくなりやすいことから、監視対象は全事業者とされています。(経済産業省電子政府サイト)

E-Flow、東電RP、JERA――3社では何が問題になったのか

電力・ガス取引監視等委員会が8月6日に公表した事後監視では、E-Flow合同会社で一部電源について応札価格の算定方法に誤りがあり、電源の維持に必要な金額を上回る価格で応札していたことが確認されました。故意の価格つり上げとは認定されていませんが、結果として約定価格を押し上げ得る行為である点が問題となりました。(経済産業省電子政府サイト)

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東京電力リニューアブルパワーでは、変動電源アグリゲートとして参加可能だった計2,703kWについて電源等情報の登録を行わず、応札できていませんでした

同社は「変動電源単独」と「変動電源アグリゲート」の区分確認や手続きの認識が不十分だったと説明しています。

監視委員会は原因究明、入札業務のチェック体制見直し、再発防止策を求める業務改善指導を行いました。(東京電力)

JERAについては今回の2027年度追加オークションそのものではなく、2029年度を対象とした2025年度メインオークションの事案です。一部の安定電源容量を誤認によって応札していなかったことが、その後の自主点検で判明しました。

監視委員会は意図的な売り惜しみではないと確認したものの、JERAも業務改善指導を受けています。(Jera)

供給不足の中でどう評価するか――高値そのものを「市場支配力」とはみなせない

今回特に重要なのは、オークションで現実に供給力が潤沢ではなかったことです。

2027年度追加オークションでは応札された458万kWがすべて落札され、非落札電源はありませんでした。全国の供給信頼度を示すEUEは0.088kWh/kW・年で、目標の0.059を上回りました。北海道では0.265まで上昇し、供給力不足エリアに追加可能な電源が存在しないため、それ以上約定量を増やせない状態で処理を終えています。(オクタ)

この状況では、価格が高いこと自体を「価格つり上げ」と評価するのは適切ではありません。供給力が不足すれば希少性を反映して価格が上がることは、市場として自然だからです。

一方で、供給余力が乏しい市場ほど2,703kWの未応札や一部電源の価格算定ミスでも限界価格への影響が相対的に大きくなります。

供給不足だから監視を緩めるのではなく、むしろ「真の希少性による価格上昇」と「人為的または事務的な供給曲線の変化」を区別する必要があります。

日本と海外――供給力を市場で確保する仕組みは各国に広がる

容量確保の仕組みは欧米でも取り入れられています。英国ではCapacity Marketを運用し、2027/28年度のT-1オークションで5.0GW、2030/31年度のT-4で40.9GWを調達目標とし、供給信頼度基準にはLOLE(供給力不足時間期待値)3時間/年を採用しています。米国PJMのReliability Pricing Modelも、おおむね3年先の供給力を市場で確保します。(GOV.UK)

一方、欧州委員会は容量メカニズムについて、供給信頼度上の問題に対して「必要かつ比例的」であり、市場競争の歪みを最小限に抑えることを重視しています。つまり世界共通の課題は、供給力を十分確保しながら、発電事業者に過剰な収益や不合理な義務を与えない制度をどう設計するかにあります。(Energy)

旧一般電気事業者等の「義務」と自主性――公正さを定義する難しさ

市場支配力監視は、旧一般電気事業者などに対して、保有するすべての電源を無条件で容量市場へ出すことを求める単純な全量応札義務ではありません。

監視の対象となるのは、稼働可能な電源を「正当な理由なく」応札しない、あるいは期待容量を不当に減らす行為です。設備故障、長期補修、廃止、脱炭素化工事、技術的制約など合理的な事情があれば、事業者の判断余地は残されます。(経済産業省電子政府サイト)

ここに制度運用の難しさがあります。

旧一般電気事業者や、旧一電の大規模火力資産を承継したJERAなどは市場への影響力が大きく、一般の事業者以上の説明可能性を求められることには合理性があります

しかし、安定供給を理由に不採算電源の維持や応札を事実上強制すれば、設備投資、休廃止、安全対策という本来事業者が負う経営判断を行政が代替することにもなりかねません

2026年1月には監視委員会が容量市場ガイドラインについて、問題となる応札を「取り消すこととする」としていた規定を「取り消すことができる」と改める建議を行いました。機械的な処分ではなく、市場への影響や事情を個別に判断できる方向への修正です。(経済産業省電子政府サイト)

今後の焦点――「全量応札」ではなく検証可能な意思決定へ

今後求められる公正性の確保策として、「大手電力は可能な限りすべて応札すべきだ」という一律の義務ではなく、例えば未応札や応札価格について第三者が事後検証できる仕組みとする制度なども検討の一つとしてはあり得ます。

電源ごとの維持費、補修計画、停止理由、期待容量の算定根拠を記録し、登録・応札時には複数人による確認やシステムチェックを組み込むことが重要となります。

2027年度は目標とする供給信頼度を満たせないまま追加オークションを終えました。

だからこそ、大規模発電事業者の市場支配力を厳格に監視することと、電源保有者の合理的な経営判断を尊重することを両立させなければなりません。

容量市場の公正さとは「価格を低くすること」でも「すべての電源を出させること」でもなく、実際の希少性を歪めずに価格へ反映させることです。

今回の3社事案は、こうした根源的な問題を明らかにしたと言えるでしょう。

【参考】

【参考】Wikipedia「Electricity market」

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