電力広域的運営推進機関(広域機関)は、2026年8月6日、容量市場2026年度追加オークション(対象実需給年度:2027年度)の約定結果を公表しました。約定総容量は458万kW(4,578,545kW)、経過措置控除後の約定総額は425億1,419万5,797円でした。約定容量は前回の829万7,383kWから44.8%減少しましたが、エリアプライスは全国一律で1万361円/kWとなり、前回の8,213~8,749円/kWを上回りました。 (オクト)
応札された電源等はすべて落札され、安定電源、変動電源、アグリゲート電源、発動指令電源の落札率はいずれも100%でした。しかし、供給曲線は需要曲線と交差せず、供給曲線の終端を用いた「仮想交点」で約定処理を行いました。
全国の供給信頼度を示すEUEは0.088kWh/kW・年となり、目標値の0.059kWh/kW・年を上回りました。EUEは数値が小さいほど供給信頼度が高いため、応札全量を確保しても目標水準には届かなかったことになります。
需要に対して応札可能な供給力が不足したといえます。
全国市場の約定処理後、北海道が不足エリア、北海道以外が充足ブロックとなったものの、北海道で追加できる電源が残っていなかったため処理を終了しました。北海道のEUEは0.265kWh/kW・年と、全国値を大きく上回っています。
この結果だけで2027年度に直ちに需給逼迫が生じることを意味するわけではありません。実際の需給は、発電所の稼働状況、燃料調達、再エネ出力、連系線運用や追加的な需給対策によって変化します。
ただし、実需給年度の1年前に行う追加オークションで、利用可能な全応札を受け入れても需要曲線に届かなかった点は、追加的な供給力の選択肢が限られていることを示しています。
全国9エリアが1万361円、九州・中部・中国で約73%
エリアプライスは、約定処理上は北海道とそれ以外のブロックに分かれたものの、最終的には全9エリアで同じ1万361円/kWとなりました。
エリア別の約定容量と経過措置控除後の約定総額は、北海道が2万8,792kW・2.86億円、東北が29万4,181kW・29.33億円、東京が42万7,859kW・41.49億円、中部が109万4,291kW・101.82億円、北陸が25万2,584kW・24.90億円でした。
関西は13万9,099kW・14.23億円、中国は77万1,401kW・70.14億円、四国は10万3,081kW・10.17億円、九州は146万7,257kW・130.21億円です。容量では九州が全体の32.0%、中部が23.9%、中国が16.8%を占め、この3エリアで全体の約72.8%に達しました。
石炭等165万kW、原子力91万kW 蓄電池・分散型資源も約98万kW
電源等の区分別では、安定電源が368.6万kWで全体の80.5%を占めました。変動電源(単独)は5.0万kW、太陽光や風力などを束ねた変動電源(アグリゲート)は37.1万kW、需要抑制や小規模電源を活用する発動指令電源は47.1万kWでした。全区分の落札率が100%であるため、これらの応札容量がそのまま落札容量となっています。
発電方式別では、石炭・バイオマス混焼などの「石炭等」が165.4万kW、原子力が91.0万kW、LNG火力が56.0万kW、石油その他が30.8万kWでした。
一般水力は3.3万kW、太陽光、風力、地熱、バイオマス専焼、廃棄物などのその他再エネは13.3万kW、安定電源として登録された蓄電池は13.8万kWです。
石炭等のうち非効率石炭火力は33.3万kW含まれます。
蓄電池13.8万kW、変動電源アグリゲート37.1万kW、発動指令電源47.1万kWを合計すると約98万kWとなり、落札容量の約21%を占めます。
大型火力・原子力が中心である一方、蓄電池、需要制御、分散型再エネを束ねる事業者も一定の供給力を担う構成となりました。
応札の74.9%は0円、それでも限界価格は1万361円
全国の応札価格の加重平均は1,580円/kWでした。区分別では安定電源が1,737円/kW、変動電源の単独・アグリゲートはいずれも0円/kW、発動指令電源が1,769円/kWです。容量ベースでは応札の74.9%が0円で、Net CONEの50%以下が13.1%、Net CONE以下が12.0%、Net CONEを超えたものは0.04%にとどまりました。
それにもかかわらず約定価格が1万361円/kWまで上昇したのは、供給曲線の終端まで全電源を採用する必要があり、シングルプライス方式で終端付近の限界応札価格が落札電源全体の基準価格になったためとも解されます。
2027年度のNet CONEは1万343円/kWで、約定価格はこれを18円上回りました。
応札価格の大半が低くても、最後に必要となる限界電源の価格が市場全体の支払水準を決める構造が表れています。
追加調達前に1億8,822万kWを確保
追加オークションの458万kWは、2027年度に必要な供給力全体を新たに調達したものではありません。
開催判断時点では、メインオークションの契約容量1億6,745万kWから市場退出容量等462万kWを差し引き、長期脱炭素電源オークションの契約容量142万kWを加えていました。
これに、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどのFIT電源等の期待容量1,766万kW、石炭・バイオマス混焼FIT電源の451万kWを算入しました。
さらに、一定の蓋然性がある容量市場外の供給力120万kW、需給逼迫時に利用できるブラックスタート電源60万kW、事後監視に伴う0.3万kWの計180.3万kWを考慮し、追加オークション前に1億8,822万kWを確保していました。
今回の458万kWを加えた確保供給力は1億9,280万kWです。
このうち容量市場での約定総容量は1億6,882万kWとなりました。市場退出による減少を埋め、FIT電源や容量市場外の供給力も積み上げたうえで追加調達を行いましたが、それでも供給信頼度の目標には届きませんでした。
落札容量上位20社 九州電力、JERA、電源開発で63%
別紙に掲載された204件の落札電源等を事業者別に集計すると、落札容量上位20社は以下のとおりです。上位3社で290万4,917kWと全体の63.4%、上位20社では435万5,976kWと95.1%を占めました。
- 九州電力株式会社:1,320,917kW(2電源等)
- 株式会社JERA:1,013,000kW(1電源等)
- 電源開発株式会社:571,000kW(1電源等)
- 北陸電力株式会社:249,066kW(7電源等)
- ゼロワットパワー株式会社:176,550kW(6電源等)
- 東北電力株式会社:171,443kW(8電源等)
- E-Flow合同会社:151,757kW(20電源等)
- エネルエックス・ジャパン株式会社:110,004kW(8電源等)
- 東京電力エナジーパートナー株式会社:100,617kW(1電源等)
- 中国電力株式会社:96,562kW(6電源等)
- 四国電力株式会社:72,621kW(5電源等)
- 株式会社響灘火力発電所:70,000kW(1電源等)
- 大阪瓦斯株式会社:52,245kW(8電源等)
- しろくま電力株式会社:42,254kW(18電源等)
- 東京瓦斯株式会社:30,278kW(5電源等)
- 君津共同火力株式会社:30,000kW(1電源等)
- 株式会社ウエストエネルギーソリューション:26,177kW(6電源等)
- 防府エネルギーサービス株式会社:25,333kW(1電源等)
- 株式会社サンヴィレッジ:23,077kW(19電源等)
- NTTアノードエナジー株式会社:23,075kW(5電源等)
九州電力、JERA、電源開発の大規模電源が容量の中心を占める一方、E-Flow、エネルエックス・ジャパン、しろくま電力、サンヴィレッジなどは、多数の電源や需要側リソースを束ねて落札しています。
大型電源とアグリゲーション型事業者の双方が追加供給力を構成する市場構造が確認できます。
前回・前々回との比較 約定量減少、価格上昇、落札率は初の100%
前回の2025年度追加オークション(対象実需給年度:2026年度)は、応札容量988万kWに対して829万7,383kWを落札し、全体の落札率は84.0%でした。
約定価格は北海道・東北・東京・中部が8,749円/kW、北陸・関西・中国・四国が8,213円/kW、九州が8,591円/kWで、経過措置控除後の約定総額は582億2,498万円でした。
今回の約定容量は前回比44.8%減で、価格は前回の各ブロックに比べ18.4~26.2%上昇しました。
一方、容量が減ったため、約定総額は前回比約27.0%減少しています。したがって、「落札額の上昇」は総支払額ではなく、主として1kW当たりの約定価格上昇を意味します。
前々回の2024年度追加オークション(対象実需給年度:2025年度)は、北海道、東京、九州の3エリアだけで実施され、
応札容量182万kWに対して133万3,332kWを落札しました。落札率は73.4%で、価格は北海道1万3,761円/kW、東京3,495円/kW、九州5,029円/kW、約定総額は105億717万円でした。
今回の約定容量は前々回の約3.4倍です。
前々回は48万kW、前回は158万kWの非落札容量がありました。
公表済みの前2回と比べ、非落札容量がゼロとなり、すべての応札電源を採用したのは今回が初めてです。その全量を落札しても需要曲線と供給曲線が交差しなかったことが、今回の最も重要な変化です。
発電・蓄電・小売事業者への影響
落札した発電・蓄電・アグリゲーション事業者にとっては、1万361円/kWを基準とする容量収入が得られる一方、実需給年度に供給力を提供するリクワイアメントや、未達時の経済的ペナルティーを織り込む必要があります。
特に発動指令電源は、調整係数反映後の容量が契約容量となる一方、指令時には調整係数反映前の導入容量を3時間継続して提供することが求められます。
蓄電池やアグリゲーターには、容量市場だけでなく、卸電力市場、需給調整市場、需給管理サービスなどを組み合わせた収益設計が重要になります。
追加オークションは実需給年度の1年前に行われるため、新設案件よりも、系統接続、EPC、設備調達、試運転を終え、2027年度に確実に供給できる案件が中心です。
高い約定価格は容量価値の上昇を示しますが、単年度の追加オークション収入だけを前提としたプロジェクトファイナンスには慎重な検討が必要です。
小売電気事業者には、追加調達分が容量拠出金を通じて負担に反映されます。
今回は追加分の総額自体は前回より減少しましたが、1kW当たり価格が上昇したため、今後のメインオークションでも供給力不足が続けば、中長期的な容量拠出金や小売料金設計に影響する可能性があります。
広域機関は、落札事業者に対して8月7日以降に個別結果を通知し、8月28日までに容量確保契約書の確認依頼を送付します。その後、8~9月頃に契約締結手続きを進め、容量確保契約の結果を10月頃に公表する予定です。(オクト)
出典
容量市場追加オークション約定結果(対象実需給年度:2027年度)の公表について