欧州委員会は2026年7月17日、2031年以降を対象とするEU排出量取引制度(EU-ETS)の見直し案を発表しました。電化推進策「電化行動計画」と合わせて公表されたもので、産業界の競争力維持と脱炭素投資の促進を両立させる内容です。
今回の見直し案は、欧州理事会の2026年6月の結論やクリーン産業ディールの方針に沿ったもので、EU-ETSを気候変動対策の枠組みにとどめず、産業の投資・技術革新を後押しする仕組みへと転換することを狙っています。EU-ETSは2005年の開始以来、対象部門の排出量を50%削減し、累計2,700億ユーロ超の収入を技術革新や産業の脱炭素化、エネルギーシステムの近代化に再投資してきました。
排出枠削減ペースを緩和、国際クレジットも活用
見直し案では、排出枠の年間削減率(LRF)を2031〜2035年は3.7%、2036〜2040年は1.7%とし、2030年までの4.4%から段階的に緩和します。2036〜2040年には高品質な国際クレジットを最大2%まで活用できる仕組みも導入し、国内での排出削減が難しくなる後半期に柔軟性を持たせます。
炭素国境調整措置(CBAM)の対象部門については、無償配分の縮小ペースを緩やかにし、廃止期限を2038年まで延長します。恒久的な炭素除去(カーボンリムーバル)もEU-ETSに組み込み、削減が難しい部門に追加的な柔軟性を与えます。
1,000億ユーロ規模の産業脱炭素化銀行を新設
投資面では、ETS収入を原資とする「産業脱炭素化銀行」を新設し、産業脱炭素化に1,000億ユーロ規模の資金を投じます。2030年以前には第1段階として「ETS投資ブースター」を稼働させるほか、加盟国には国内ETS収入の50%をETS対象部門の脱炭素投資に充てるよう求め、2030年までに1,000億ユーロ超の投資創出を見込みます。
低所得の加盟国を支援する近代化基金も継続するほか、航空・海運部門への適用強化や廃棄物焼却分野への対象拡大も盛り込まれています。今回の提案は欧州議会・理事会での審議を経て正式に決定される見通しです。
出典:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_26_1596