【関西電力グループ 経営計画2026】AI・データセンター需要に備え送配電網を次世代化 15兆円投資へ

関西電力は、2026年4月30日、2040年までの長期戦略と2026~2028年度の施策をまとめた「関西電力グループ 経営計画2026」を発表しました。2040年度までの累計投資額は15兆円で、最初の3年間には成長投資1兆円と、安全・安定供給のための維持投資1兆5,000億円を計画しています。送配電だけの投資額は個別に示していませんが、高経年化設備の更新と需要増加への対応を主要用途に位置付けています。 (関西電力)

関西エリアでは、人口減少に伴って家庭用需要が縮小する一方、産業用需要の増加が見込まれます。電力広域的運営推進機関の2026年度需要想定では、関西の使用端電力量は2025年度の気象補正後1,308億7,800万kWhから2035年度に1,370億4,100万kWhへ約4.7%増加します。産業用は483億5,200万kWhから560億9,100万kWhへ約16%増え、夏季最大需要も2,691万kWから2,774万kWへ上昇する見通しです。

更新投資を「次世代ネットワーク」へ転換

今回の新規性は、老朽設備を単純に取り替えるだけでなく、設備更新を電力ネットワークのデジタル化と高度化につなげる点です。関西電力送配電は、系統混雑処理システム、第2世代スマートメーター、センサーや遠隔監視機能を持つ次世代機器を導入します。巡視・点検データを使ったアセットマネジメント、AI・ロボットによる設備状態の把握、事故原因の早期特定と復旧迅速化も進めます。

さらに、太陽光、風力、蓄電池などの分散型エネルギー資源を制御し、系統混雑を緩和する実証にも取り組みます。関西エリアで約15万kmの送配電線と約950カ所の変電所を運用する規模を生かし、託送設備を電気の搬送網から、需要調整や脱炭素化も支える「エネルギープラットフォーム」へ転換する構想です。(関西電力)

需要側では、京都府精華町で受電容量70MWのハイパースケールデータセンターを2027年度中に運用開始し、2035年までに総受電容量900MWを目指します。AI、クラウド、半導体関連の需要を、送配電、発電、データセンター、光ファイバー事業へ横断的に取り込める点は、一般的な送配電会社にはない関西電力グループの特徴です。(関西電力)

規制収益の拡大は株価の支援材料に

一般送配電事業には、国が5年間の事業計画と必要費用を審査するレベニューキャップ制度が適用されます。承認された投資を実施しながら、DXなどで想定以上の効率化を達成すれば、その成果を一定程度利益として確保できる仕組みです。このため、需要増加に対応する系統増強が収入上限に適切に反映され、工事費や運用費を抑えられれば、安定的な収益拡大につながる可能性があります。(経済産業省電気事業情報提供サイト)

送配電事業の2025年度売上高は3,862億円で前年度比0.7%減でしたが、経常利益は557億円から630億円へ13.0%増えました。規制事業としての安定性に加え、関西の産業用需要、データセンター接続、再エネ・蓄電池の系統利用が拡大すれば、中長期の利益基盤を補強するとみられます。(関西電力)

投資家の視点では、送配電収益の安定化、2026~2028年度累計2,700億円以上の株主還元、連結配当性向25~35%という方針は、株価評価の支援材料になり得ます。2025年度の年間配当は75円で、2026年度は80円を予想しています。ただし、投資計画が株価上昇を保証するものではなく、利益への反映時期や市場全体の金利・株価動向にも左右されます。(関西電力)

財務体質は改善、なお4兆円超の負債

連結売上高は、2023年度4兆593億円、2024年度4兆3,371億円、2025年度4兆566億円で推移しました。経常利益はそれぞれ7,659億円、5,316億円、5,185億円、親会社株主に帰属する純利益は4,418億円、4,203億円、3,800億円です。2025年度も高い利益水準を維持しましたが、2026年度の経常利益予想は2,900億円であり、足元では燃料費や購入電力料の増加が重荷になる見込みです。(関西電力)

有利子負債は2023年度の4兆5,804億円から、2024年度4兆4,717億円、2025年度4兆2,666億円へ減少しました。自己資本比率も25.2%から31.8%、35.1%へ改善しています。ただし、絶対額ではなお大きく、経営計画も2026~2028年度平均のNet Debt/EBITDAを5倍程度としています。電力事業は設備投資の回収期間が長いため、金利上昇が続けば借換費用と資本コストが増え、投資採算を圧迫する可能性があります。(関西電力)

費用対効果とROICが評価の分岐点

関西電力は、2026~2028年度平均のグループROICを3.3%以上、送配電事業を2.5%以上とし、2040年度には送配電ROICを4%以上へ引き上げる方針です。一方、資材価格、施工人員不足、設備の長納期化により投資額が膨らめば、WACCとの利幅は縮小します。レベニューキャップへの費用反映も国の審査を受けるため、投資額の増加がそのまま利益増加になるわけではありません。(関西電力)

需要増加を先取りした送配電投資は、関西電力の安定収益と成長事業の双方を支える可能性があります。ただし企業価値を高める条件は、接続需要を実際に獲得し、設備稼働率を高め、金利を上回る投資収益率を確保することです。デジタル化による保守費削減や工期短縮を含め、投資額ではなく費用対効果を継続的に確認する必要があります。

※本記事は公開情報に基づく情報提供を目的としたものであり、特定の株式その他の有価証券の取得、売却または保有を推奨するものではありません。当社は本記事の正確性、完全性および将来の成果について責任を負いません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

出典

関西電力グループ 経営計画2026

関西電力「財務サマリー」

関西電力「財務指標の推移」

関西電力「2025年度決算 財務ハイライト」

電力広域的運営推進機関「2026年度 全国及び供給区域ごとの需要想定」

電力・ガス取引監視等委員会「託送料金とレベニューキャップ制度」

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