国際エネルギー機関(IEA)は2026年7月16日、年次報告書「Global Critical Minerals Outlook 2026」を発表しました。地政学的環境が複雑化するなか、クリティカルミネラル(重要鉱物)が各国のエネルギー・経済・国家安全保障政策の最重要課題に浮上していると指摘し、供給網の多様化に向けた政策対応の必要性を訴えています。

銅・リチウム・ニッケル・コバルト・黒鉛・レアアースなど主要鉱物の価格は近年下落傾向にありましたが、供給逼迫や主要国の輸出規制拡大を背景に2025年から2026年初頭にかけて反発しました。価格変動と地政学的緊張の影響で、鉱物投資額は2025年に前年比9%減少し、数年続いた増加基調が途切れました。
精製工程の供給集中が加速、公的資金は4倍増
過去2年間の精製供給量の増加分は、ニッケルのインドネシア、その他主要鉱物の中国という上位精製国だけで4分の3以上を占め、供給網の地理的集中が強まりました。一方、供給多様化に向けた各国の公的資金投入額は2023〜2025年で4倍超の650億ドルに達し、レアアース精製では最大供給国のシェアが2023年の90%超から2025年には85%に低下しています。
投資は採掘工程に偏り、精製・下流工程の拡大は遅れています。中国が2025年4月に導入したレアアース輸出規制は一部自動車メーカーの減産を招き、10月の規制拡大が完全実施されれば、中国以外での年間下流生産額6兆5,000億ドルが影響を受ける可能性があるとしています。
緊急時への備えと投資促進を提言
報告書は、市場規模は小さいものの供給途絶時の影響が大きい「戦略的マイナーミネラル」への政策的関心を強めるべきだとも指摘しています。重要鉱物は最終製品価格に占める割合が小さく、電池セルコストの約4分の1を占めるものの電気自動車価格に占める割合は約3%にとどまるとしています。
IEAのファティ・ビロル事務局長は、経済的価値の大部分が供給網の集中した少量の重要鉱物に依存していると述べた上で、レアアースなど一部で政策・投資支援の効果が出始めていると評価しています。各国の政策立案者には、緊急時の備え、投資促進、技術・設備・労働力面の課題への対処を求めています。