国際エネルギー機関(IEA)は2026年3月12日、月次報告書「Oil Market Report」の3月号を公表し、中東での紛争により、ホルムズ海峡を通過する原油・石油製品の流通量が開戦前の日量約2,000万バレルからごくわずかまで落ち込み、ガルフ産油国が原油生産を少なくとも日量1,000万バレル削減していると報告しました。IEAはこれを「世界の石油市場史上最大の供給支障」と位置付けています。

紛争は2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃に端を発し、原油価格は一時1バレル120ドル近くまで急騰後、報告時点で約92ドルとなり、月間で20ドル上昇しました。イラク、カタール、クウェート、UAE、サウジアラビアで大幅な減産が生じ、原油生産は少なくとも日量800万バレル、コンデンセート・NGLも日量200万バレルが停止しているとIEAは推計しています。
供給・需要への影響
世界全体の石油供給量は3月に日量800万バレル減少する見通しで、非OPEC+の増産が一部を相殺するものの、2026年通年では平均日量110万バレルの増加にとどまる予測です。ガルフ産油国は2025年に日量330万バレルの石油製品と150万バレルのLPGを輸出していましたが、地域の精製能力300万バレル超がすでに停止しています。
中東地域での大規模な航空便欠航やLPG供給混乱により、世界の石油需要は3〜4月に平均で日量約100万バレル押し下げられる見通しで、2026年通年の需要増加見通しも前月の日量85万バレルから64万バレルへ下方修正されました。
緊急備蓄放出の決定
IEA加盟国は3月11日、中東紛争による供給混乱に対応するため、緊急備蓄から4億バレルの石油を市場に放出することで全会一致により合意しました。世界の石油在庫は1月時点で82.1億バレルと、2021年2月以来の高水準にあり、OECD諸国が全体の50%、中国の原油備蓄が15%、洋上在庫が25%を占めているとしています。
IEAは、今回の協調備蓄放出は重要な緩衝材となる一方、紛争が早期に収束しなければ一時的な措置にとどまるとし、ホルムズ海峡での船舶輸送再開が石油市場の今後を左右する最重要な要素になると指摘しています。