経済産業省と国土交通省は、2026年7月14日、洋上風力促進ワーキンググループと洋上風力促進小委員会の第44回合同会議を開催しました。
会合では、事務局が国内外の事業環境や政策的位置づけ、発電コスト、当面の案件形成方針などが詳しく説明されました。
そこで今回からシリーズでその内容を解説します。第1回は、世界で再び活発化する洋上風力開発と、日本が同電源を重視する政策的な背景を取り上げます。
欧州10か国、2050年までに100GW
欧州では開発を再加速する動きが現れています。欧州10か国は2026年1月、「ハンブルグ宣言」により、大規模共同プロジェクトを通じて2050年までに100GWの発電容量を実現することで合意しました。
参加国は英国、ドイツ、フランス、デンマーク、オランダ、ノルウェーなどです。国境を越えた計画調整、資金調達の強化、許認可の迅速化、インフラの安全性確保、サプライチェーン拡大、洋上再生可能水素などを優先協力分野に掲げました。
英国では2026年1月に計8.4GWのプロジェクト支援が決まり、フランスも同年6月、計約10GWの洋上風力開発権に関する公募を開始しています。
日本と英国は2026年6月の首脳会談に合わせ、「日英洋上風力産業コンパクト」を立ち上げました。日本企業による英国プロジェクトへの参画、研究開発、資金調達、供給網構築を具体化し、エネルギー安全保障の強化とコスト低減につなげる方針です。
電力需要増に対応する国産エネルギー
日本はエネルギー供給の多くを輸入化石燃料に依存し、国際価格の変動や国富流出のリスクを抱えています。
加えて、DXやGXの進展で電力需要の増加が見込まれ、十分な脱炭素電源を確保できるかが経済成長と産業競争力を左右する状況です。
政府は洋上風力について、海に囲まれた日本の地理的条件を生かせる国産エネルギーであり、再エネの主力電源化に向けた「切り札」としています。

政策上重視される理由は三つあります。第1に、陸上再エネの適地が限られるなか、広い海域を利用してエネルギー自給率を高められることです。第2に、案件の積み上げによってサプライチェーンと事業ノウハウが蓄積し、将来的なコスト低減が期待できることです。第3に、建設や運転・保守を含む産業の裾野が広く、地域雇用や国内経済への波及効果が見込まれる点です。
産業基盤と需要家市場はなお未成熟
一方、国内の製造基盤、人材、施工能力、運転・保守体制はまだ整備の初期段階にあります。事務局は、初期案件を着実に形成することで産業基盤を構築する必要性を示しました。また、再エネ価値を適切に評価する需要家が少なく、市場の厚みが不足している点も課題に挙げています。
このため、発電事業者や機器メーカーには、国内案件だけでなく英国など海外事業への参画を通じた技術・施工経験の蓄積が重要になります。金融機関やEPC事業者にとっても、今後の案件量、国内供給網の形成、長期的なコスト低減の実現性が投融資や設備投資の判断に影響する可能性があります。
今回の説明は、洋上風力の政策的位置づけを改めて示したもので、この部分だけで新たな支援制度や公募条件が正式決定されたわけではありません。次回は、物価、円安、金利上昇、工事費、送電ケーブルなどが事業コストをどこまで押し上げているのかを解説します。
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