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【解説】世界で加速する核融合発電、2030年代実証へ官民投資が本格化

量子科学技術研究開発機構(QST)とFusion for Energyは、2026年3月13日、茨城県那珂市の超伝導トカマク型装置「JT-60SA」で、プラズマ加熱実験に向けた統合試験運転の開始を発表しました。2月27日に試験を始め、2026年内の加熱実験開始を目指します。日本政府も2030年代の発電実証を掲げ、核融合は基礎研究から発電システムの統合・建設を競う段階へ移りつつあります。

最大34点の長時間同時計測を実証したプラズマ計測システム(出典:京都大学)
最大34点の長時間同時計測を実証したプラズマ計測システム(出典:京都大学)

核融合は、重水素と三重水素など軽い原子核を1億度級のプラズマ中で融合させ、ヘリウムと中性子を生じる反応です。核分裂炉のような連鎖反応ではありませんが、発電所として成立させるには、反応熱を取り出すブランケット、蒸気タービンなどの発電系、三重水素の増殖・回収、放射化した機器の遠隔保守までを一体化する必要があります。方式は、磁場で閉じ込めるトカマク、ヘリカル/ステラレーターと、レーザーで燃料を圧縮する慣性閉じ込めに大別されます。

研究装置から「発電所」へ

国内では電力・建設・重電企業の参加が具体化しています。関西電力によるStarlight Engineへの出資は、先進超伝導トカマク「FAST」で燃焼プラズマ、熱変換、燃料システムを統合する計画を支えます。Helical Fusionと安藤ハザマの提携では、2030年代を目標とする「Helix KANATA」の施設計画、施工、プロジェクト管理まで対象を広げました。

炉内の状態を正確に捉える計測も不可欠です。三菱電機・京都大学・核融合科学研究所の開発は、周波数コムとデュアルコムダウンコンバート方式を使い、「Heliotron J」で最大34点の電子密度を長時間同時計測しました。研究炉の性能競争に加え、制御・計測、建設、保守を含む産業基盤づくりが始まっています。

世界で進む方式競争と大型調達

海外では民間資金が方式の多様化を後押ししています。ドイツのFocused Energyは2億4,000万ドルを調達し、レーザー慣性核融合とドイツ・ビブリスでの実証を進めます。米Thea Energyは、平面コイルとデジタルツインを組み合わせたステラレーターを開発しており、出光興産が出資しました。トカマク一極ではなく、連続運転性、製造容易性、制御性、建設費を巡る技術競争が進んでいます。

発電実証を「正味電力」につなげられるか

今後の焦点は、プラズマ単体のエネルギー利得ではなく、加熱・冷却・燃料循環など所内動力を差し引いて系統へ送れる正味電力を得られるかです。高エネルギー中性子に耐える材料、三重水素増殖率、超伝導磁石、遠隔保守、安全規制、巨大設備の資本費と工期も残ります。2030年代の各計画は事業者や政府の目標であり、運転開始が確定したものではありません。投資判断では、実験成功だけでなく、部材供給網、規制審査、稼働率、交換周期、建設単価まで追うことが重要です。

核融合は「将来の夢」だけでなく、電力会社、重電、建設、素材、計測、デジタル制御が参加する長期産業政策になり始めました。一方、技術方式ごとの成熟度には差があります。JT-60SAなど公的研究基盤と民間プロジェクトを接続し、検証可能な工程・費用・安全基準を積み上げられるかが、2030年代の発電実証を現実の電源開発へ変える条件になります。

出典

QST「JT-60SA統合試験運転の開始」

内閣府「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」

京都大学「世界最高水準のプラズマ計測システム」

関西電力「Starlight Engineへの出資」

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