内閣官房は、2026年7月31日、第14回原子力関係閣僚会議を開催し、「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の改定を決定しました。政府として初めて原子力発電所の建て替え需要を年代別に示し、2040年代までに約220万~550万kW、2050年代までに累計約1,270万~1,600万kWが必要との見通しを明記しました。大型炉換算では、それぞれ約2~5基、約11~14基に相当します。
委員・オブザーバー方式の会議ではなく、赤澤経済産業大臣、松本文部科学大臣、山田原子力規制委員会委員長の提出資料と、高市内閣総理大臣による会議のまとめから、政府が決定した方針を確認する形となります。
2040年代に最大5基、2050年代に最大14基分
建て替え見通しは、第7次エネルギー基本計画が示した2040年度の発電電力量1.1兆~1.2兆kWh、原子力比率約20%を前提に、設備利用率70%、原則60年運転として試算したものです。建設中の大間原子力発電所、島根原子力発電所3号機、東京電力東通原子力発電所1号機は供給力に含める一方、電気事業法に基づく運転期間延長は織り込んでいません。
この数値は、個別発電所の建設地点や事業者、着工時期を決定した「建設計画」ではなく、既設炉の運転終了を踏まえた設備容量の見通しです。ただし、原子力産業の人材確保、部品・素材の供給網、メーカーの製造設備、金融機関の審査体制を維持するため、長期的な案件形成の必要量を政府が定量化した点は大きな変更です。
6月10日から7月9日まで実施されたパブリックコメントには572件の意見が寄せられました。建て替え試算の前提、安全対策費、放射性廃棄物、政策決定過程などへの懸念も示されましたが、政府は意見への考え方を公表した上で、今回の行動指針を決定しました。
次世代革新炉、NEDOの資金供給機能を強化
次世代革新炉では、革新軽水炉に加え、SMR、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーを対象に、研究開発から社会実装までを切れ目なく支援します。高市総理は、安全性の高い次世代革新炉の早期導入に向け、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の役割を脱炭素エネルギー全般へ広げ、原子力とフュージョンへの資金供給機能を強化する考えを示しました。
SMRについては、海外技術の導入だけでなく、地震・津波など日本固有の自然条件に適合する設計の研究、海外実証プロジェクトへの参画、規制当局との早期の技術対話を進めます。大型炉とは異なるモジュール生産、工場製造、輸送・現地組立を前提とするため、メーカーやEPC事業者には標準化と量産体制の構築が求められます。
松本文部科学大臣提出資料では、日本原子力研究開発機構(JAEA)の機能を、革新炉開発、安全研究、人材育成の3分野で強化します。高速炉・高温ガス炉などの研究開発を産学官で進める中核拠点、人材育成の司令塔機能、大学や民間企業が研究施設を共同利用できる基盤を整備します。原子力人材育成ネットワークの事務局機能をJAEAに集約し、2026年度中を目途に中長期の人材需給ロードマップを策定する方針です。
六ヶ所再処理工場の工程管理、最終処分地域を拡大
バックエンドでは、六ヶ所再処理工場の2026年度中、MOX燃料工場の2027年度中という竣工目標を踏まえ、設備を試験的に動かす取組を含めた工程全体の進捗管理と、運転・検査を担う人材確保を官民で進めます。再処理工場の最大処理能力は年間800トンU、MOX燃料工場の最大加工能力は年間130トンHMで、竣工後の安定操業までを政策対象に位置付けました。
最終処分については、寿都町、神恵内村、玄海町での文献調査を進めるだけでなく、全国で新たな調査地点を増やす方針です。国が前面に立った自治体との対話、NUMOによる情報提供、調査受け入れに伴う自治体の事務・財政負担の軽減を進めます。ただし、最終処分地や次の調査段階への移行を今回の会議で決定したものではありません。
規制の独立性を維持し、審査・保障措置体制を増強
山田原子力規制委員会委員長提出資料では、再稼働炉の増加、長期運転、次世代革新炉、再処理施設の稼働を見据え、機動的な審査・検査ができる人員と専門能力を増強する方針が示されました。安全重要度に応じたグレーデッドアプローチ、審査情報の整理へのデジタル技術活用、次世代炉の開発段階からの技術的な意見交換などを進めます。これは安全基準の緩和ではなく、規制委員会の独立性を維持した上で、安全上重要な論点へ審査資源を集中する取組としています。
六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場では大量のプルトニウムを扱うため、IAEA査察への対応、核物質の計量管理、事業者の責任を明確化します。政府は、独立行政法人の設置を含む保障措置体制の抜本的強化を検討し、次期通常国会への法案提出を目指します。
今回の決定により、電力会社には建て替え候補地点、炉型、資金回収方法の具体化が求められます。メーカーとEPC事業者には長期間途絶えていた製造・施工能力の再構築、金融機関には巨額の初期投資、建設遅延、規制変更、バックエンド費用を織り込んだ審査が必要になります。政府が設備容量の見通しを示した一方、個別案件の収益確保制度や費用負担の詳細は今後の制度設計に委ねられています。
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