三菱ケミカルは2026年8月3日、広島事業所の調整池「潮遊池」で、オンサイトPPAによる水上設置型太陽光発電設備の利用を開始したと発表しました。設備容量は1,982.4kWで、8月1日に運転を開始。年間約2.2GWhを供給し、約1,000トンのCO2削減を見込みます。発電事業者のキョーラクが設置・所有・運営を担い、発電電力は外部送電網を介さず事業所内で消費されます。
水上太陽光は、ため池、調整池、ダム湖などの水面にフロートと太陽光パネルを設置する方式です。土地造成を抑えられ、パネル温度の上昇を水面が緩和する効果も期待されます。三菱ケミカルの事例は、売電を主目的とする従来型から、工場がその場で使うオンサイトPPAへ用途が広がっていることを示します。
国内:PPAを通じて需要家との結び付きが強まる
国内では、京セラEPA、関西電力、南海電鉄の約2MW案件が、兵庫県内のため池に新設する電源を南海電鉄高野線へ供給します。2026年4月の供給開始を予定し、水上太陽光を鉄道運行の脱炭素化に結び付けるオフサイトPPAです。
また、ジャパンセミコンダクターのバーチャルPPAでは、香川県の合計7,842.1kWの水上太陽光発電所が生み出す環境価値を半導体工場へ供給し、年間約4,173トンのCO2削減を見込みます。オンサイト、オフサイト、バーチャルという異なる契約方式がそろい、水上太陽光が需要家の立地や調達方針に応じて選択される段階へ入っています。
海外:ダム一体運用と地域還元で大型化
海外では、水力発電所との一体運用が大規模化を牽引しています。タイのEGATによる2.7GW級構想は、全国9カ所のダムで合計2,725MWを整備する計画です。昼間は太陽光を利用し、夜間や曇天時には既設水力で補完する「Hydro-Floating Solar Hybrid」により、変動電源と調整力を同じ貯水池で組み合わせます。
韓国の農業用貯水池を活用する計画は、2030年までに300万kWの導入を掲げ、住民参加や収益還元を通じて農村振興と発電事業を結び付けます。大規模化だけでなく、水面を管理する地域との利益配分が事業継続の条件になりつつあります。
係留・水質・災害対応が主要課題
水上太陽光は造成費を抑えられる一方、フロート、係留索、アンカー、直流ケーブルの耐久性、腐食、波浪、台風、水位変動への対応が必要です。農業用ため池では渇水時の着底、堤体保全、水利権、漏電・救難体制、水質や生態系への影響も確認しなければなりません。陸上設備より点検や交換が難しく、異常気象時の設計荷重、保険、撤去費まで含めた長期O&Mが採算を左右します。
将来は「水面利用」からエネルギー拠点へ
今後は、工場の調整池を使うオンサイトPPA、需要地へ送るオフサイトPPA、環境価値を取引するバーチャルPPAが並行して広がる見通しです。さらに、ダム湖では水力、揚水発電、蓄電池、EMSとの統合運用が進みます。水面利用契約、所有者と管理者の責任分担、係留設計、保険・保証、環境モニタリングを標準化できれば、日本の多数のため池や工業用調整池も分散型電源として活用しやすくなります。発電量だけでなく、系統負荷、需要家の時間帯別消費、地域還元まで含めて設計することが、水上太陽光の次の成長条件となります。
出典:三菱ケミカル「広島事業所における水上設置型太陽光発電設備の導入について」/d-sharing.jp「京セラEPA、関西電力、南海電鉄向け約2MW水上太陽光PPA」/d-sharing.jp「ジャパンセミコンダクター、水上太陽光のバーチャルPPA」/d-sharing.jp「タイ・EGATの2.7GW級構想」/d-sharing.jp「韓国、農業用貯水池で2030年までに300万kW」